縁を紡ぐ
こんにちは、設計部の作本です。
私事ではありますが、先日実家の建替えが無事に竣工を迎えました。
元々は祖父から受け継いだ敷地に、両親が36年住み慣れた家でしたが、街の発展に伴う道路拡幅のため立退くこととなり、新たな場所に住処を移すことになりました。
両親にとっては終の住処になるであろう家を、私自身が設計することは大きなプレッシャーでしたが、このような形で親孝行できることは、この道を選んだ自分の特権でもあるなと、設計士としての役目を果たすことにしました。
計画にあたって敷地の検討、両親の要望をヒアリングして、一から図面を描き、提案、相談をしながら間取りと仕様を決めました。
母からの一番の要望は「縁側が欲しい」「愛犬と縁側で日向ぼっこをしたい」でした。
更に正確に言えば「なぐり加工の縁側」です。
なぐり加工とは、木材の表面に凹凸をつける日本古来の伝統加工で、現在では木の趣きを感じさせ、意匠性を高めるデザイン要素の一つとされています。
(なぐり加工を意匠として取り入れたのは、あの千利休だそうです。)
なぐり加工の床材はフラットなものよりもコストや施工の手間がかかり、無垢材の色ムラや木目のばらつきがあります。
床材の凹凸に対して、サッシや巾木など水平な部材との取合い部分をどのように納めるか、床の方向が変わる部分の組み方をどうするかなどの検討が必要でしたが、頼れる現場監督や大工さんの知恵や力を借り、現場で実物を並べながらの打合せも経て、無事に仕上がりました。
陽射しや照明のあかりでできる陰影に趣を感じたり、裸足で歩くと何とも言えない心地よさがあり、癒やされます。
愛犬も縁側が気に入ったようで、天気の良い日は気持ち良さそうに日向ぼっこをしています。
工事中は地鎮祭や上棟式などの節目を迎えても、実家を建てている感覚は全く無く、ずっと不思議な気持ちでしたが、いざ引渡しを終えて実際に住んでいる両親を見ると、とても感慨深かったです。
改めて、家づくりの大変さや、色んな人の力を借りてようやく形になっていくのだなと、実感しました。
普段は設計士の立場からお施主様と家づくりをさせて頂いていますが、今回は違った角度での経験も出来たので、これを糧に一つ一つのご縁を紡いで、これからも精進したいと思います。